あしあと

すきを見て更新再開したいなとは思う

ブラック・ブレット―神を目指した者たち―

ブラック・ブレット―神を目指した者たち (電撃文庫 か 19-1)

ブラック・ブレット―神を目指した者たち (電撃文庫 か 19-1)

滅亡寸前の人類を救えるのはたった一人の少年……!?

 ウィルス性の寄生生物との戦いに敗北した近未来。人類は狭い国土に追いやられ、絶望とともに生きていた。そんな暗闇に閉ざされた世界で──。
 東京エリアに住む少年・蓮太郎は、対ガストレアのスペシャリスト「民警」として、相棒の幼女・延珠とともに、日々、危険な任務を遂行していた。二人はある日、東京を壊滅させかねない極秘任務を受けるのだが……。
 スリリングな近未来ヒロイック・アクション、ここに開幕!


「止めるぜ影胤……ッ、お前に無慈悲に殺された者のためにも、そして木更さんや延珠のためにも―――蛭子影胤ッ、貴様だけは止めてやんよッ!」

 この一言からの展開が熱いのなんの。バトルもののラノベで主人公がひた隠しにしていた能力を怒りで発動するという展開は個人的に大好きなので、すごい胸熱でした。加えて、「天童式戦闘術一の型三番―――『轆轤鹿伏鬼ッ』」みたいな武術の流派とか○○の型とか技名とか厨二心をくすぐられすぎて色々黒い歴史が爆発しそうでした。

 さて、一方、物語全般は最近のラノベには珍しく暗い話で、ガストレアという生物による人類滅亡寸前の世界で、差別や飢餓などの社会の暗い面を書き出しているのが興味深く、面白かった。特にその中でも、差別が物語の中心に組み込まれていて、ガストレアが元になって誕生した延珠などの「呪われた子どもたち」という新種の人類をガストレアによって近しい人を殺された上の年代――「奪われた世代」が憎むのは責任転嫁ではあるが、当然の流れだろう。しかし、彼らは女性のみでまだ第一世代が10歳程度と幼い。思春期を迎えてさえいない不安定な時期に、周りから侮蔑をされたらどう感じるだろうか。想像するだけで恐ろしいことだ。故に、その彼らが民警のイニシエーター(開始因子)として保護者代わりのプロモーター(加速因子)を支えにガストレアを倒している姿は、人類の救世主足りえるものだが、一方でプロモーターを通じて人類に縋っているという痛々しさも見え隠れしている。しかも、彼らはあくまで普通の人よりもウィルスの侵食が極めて遅いだけであり、その能力を使うたびに体が侵食され、襲われた人と同じようにガストレア化という「死の恐怖」が常につきまとっている。
これらの設定がとても緻密で世界観と合致しており、作品の雰囲気を作り出して、一気に引きこまれた。

 勿論、物語の展開の仕方も上手く、最初に言ってある通り、プロモーター主人公の力と経歴、イニシエーターである相棒の延珠と敵とのバトルへの伏線の張り方など、何度も読み返しても良いと思える作品だった。早く2巻が読みたい!!