あしあと

すきを見て更新再開したいなとは思う

聖剣の姫と神盟騎士団I

あらすじ

「おまえ、わたしのものになりなさい」「は?」お調子者の初級魔道士ダークは、無敵の傭兵騎士団“聖剣団”の若き女剣士フィーネによって、無理やり団員にさせられる。だがラグナの谷を守るその騎士団は、今や弱小の“二代目”となっていた!フィーネの下で聖剣団復活に付き合わされるダークだが、そんな矢先に禁断の黒魔術を操るカーラーン国の“魔軍”がラグナの谷に侵攻し―!?谷が危機を迎える中、ダークは思わぬ作戦に出る。

 

引用

「だからおれたちは、人々が聖剣団を認識しているたったひとつの要素を優先するしかない。それは、ほかのなにを差し置いてでも、まずは『負けない』ことだよ。つまりは、なにをおいても谷を『守る』ということさ。それが聖剣団であることを証明する、おれたちにできる数少ないやり方なんだ」

 

 感想

 一部を抜き出してみると格好良いこと言ってるように見えるから素敵。でもこれってヒロインに自分の作戦が卑劣な行為だと詰られた後の主人公の詭弁なんですぜ?ビックリするほどゲスい小悪党の主人公が誕生したものですわ。いいぞ、もっとやれ。

 

 さて、僕にとって著者の杉原智則さんとは電撃文庫で「烙印の紋章」の印象が強く、この作品の帯文句にも「超王道ファンタジー始動!」とデカデカと謳っていて、これは角川スニーカーにも凝りに凝った軍師物が……!と思っていた時期がありました。失礼ですが読了してから、帯文句を見返すと鼻で笑うことしかできませんでしたが。いい意味で。

 

 つまりそれは決して面白くなかったわけではなく、むしろ作品全体としては壮大な風呂敷が現在も今後も魅力的であり、それを支えるキャラクターもひとりひとりが活き活きとしていました。シリーズ最初の導入でここまで大きな風呂敷とキャラクターを詰め込みつつ、ちゃんとしたストーリーに仕立て上げることの出来るのは作家の実力なのだなと感じます。

 

 それ故に―――各キャラクターが魅力的である故に、この作品を動かす人物、主人公の小悪党ぶりが逆に映えること映えること。ヒロインのフィーネが剣士として強く/性根が真っ直ぐであるのも手伝って、主人公ダークの自身の存在/能力を事ある毎に(弱いくせに)自慢し、目的のためならばどんなに狡い手でも使って辿り着く行動が読者視点でも「うわっ」と思えるような展開をしていて、最後の方のダークには泥にまみれてでも勝ちを目指すある種の主人公らしさはあったものの、覚えているのは狡いことをしてる彼のイメージばかりな辺り、察さざるを得ない状況なのではないかと。まぁ、そこもこの作品の魅力なのは間違いないですが。

 

 最後に言えることは一つ。やっぱり脳筋純粋系のヒロインは別格の可愛さがあるなぁ。